港の上に立つアイリス3 -とらわれた俺-
…………。
目を開けると俺は、エルベと暮らしていたあの部屋の一室で寝ていた。
周りは、当時俺とエルベが暮らしていたままの部屋だった。
……先ほどの出来事はすべて夢であったのだろうか?
今この状況ではわからない……。
でもなんなんだろうか。この妙な違和感は。
俺は、頭の中が混乱したまま、部屋のドアを開けると、そこには何食わぬ顔でエルベがいた。
あの俺が旅立った日のままの姿で。
彼は俺に向かって思わぬ一言を告げる。
「おまえ、こんなにのんびりしてていいのか? 今日は旅立つ日だろ」
彼のセリフに驚いた。どうやら時間的には、俺が旅立つちょうどその日のようなのだ。
彼に今日の日付を尋ねたところ、どうやら本当にその日らしい。
だが、次第に何でかわからないが違和感が次第に大きくなっていった。
俺はこの妙な違和感がなんなのかを解決すべく、町をまわることにした。
無論部屋にあるあの荷物を持ち。
……エルベと慣れ親しんだ部屋を出た瞬間、ベッドから起きてからの妙な違和感の正体に気づいた。
それは、家の配置や構成がすべて鏡で写したかのごとく反対なのだ。エルベの利き腕さえも。
なぜ俺は起きてからそのことに気づかなかったんだ!!!!
となれば、信じたくもないが、これは一種の幻覚の類なのかもしれない。
ならばとる行動は一つだった。そう、アイリスに直に会いに行く。
俺は、アイリスの家に急いで向かった。
……。
アイリスの家を見た瞬間改めてこの世界が幻覚でできていることを実感せざるを得なかった。
アイリスの家だけは、周りの家と比べて相当な年月がたっていたのだ。
きっとこの家の中に、ここから抜け出すヒントがあると直感した俺は、アイリスの家の扉を強引に開けた。
ギィィィィィィィ……。
ドアはまるで、何年も使われていない屋敷の扉のような不気味な音を立てた。
中は昼なのにとても暗く、お化けや魔物といった類のものが出てもおかしくないような雰囲気を放っていた。
アイリスの家の中はというと何とも言えない異臭が漂っており、数年は人が使っている形跡がないことがすぐ理解できた。
俺はボソっと呟く。
「あの時とまったく同じ状況だな」
苦笑いをし、アイリスの部屋へと向かう。
まるで”何か”に導かれるように。
アイリスの部屋の前に着くと、背中に強烈な寒気が走る。
間違いなく、この部屋の扉の先に得体の知れない何かがいると、俺の第六感がそういっていた。
勇気を決して扉を開けるとそこには――
――アイリスが立っていた。
「ふふふふ……やはり貴方はここに真っ先に来た。貴方なら着てくれると思っていたわ。ルイル……」
アイリスでは口ではそのようなことを言ってるものの、そのセリフからは俺のことなどどうでもいいような感じでしか聞こえなかった。
きっと俺がこのような状況に置かれてるせいであろうが……。
俺は返す言葉も何故か思いつかなく黙っていた。
「何故私に会えたのに黙っているの? 聞きたい事だっていくらでもあるはずよね? ねえ……なんで私の目を見てくれないの?」
俺は、アイリスの目をみることが出来なかった。
彼女の目を見ると、本当にどうにかなってしまいそうだったからだ。
それに聞きたい事だって、扉を開ける前まではいくらでもあった。そう扉を開ける前までは。
でも、アイリスを見た瞬間に聞きたいことも疑問もすべて頭から消えてしまった。
実際は、聞くべきことや疑問がすべてなくなったという表現のほうがある意味正しいのかもしれない。
状況的にアイリスに会い、この状況に置かれていること自体彼女に聞くべきなのだろうが……。
そんな俺の状況をわかっててなのか、アイリスは一人ひたすらと俺に向かって独り言のように話を続けた。
「ふふ……。ねえルイル。貴方は、街の人たちを見ながらここまで来たのよね。
貴方と仲が良かったエルベ……当時のままだったでしょう?
エルベだけではないわ。学園に通っていた学生……港にいる人……町で働く人……そう皆当時のまま。
あなたが旅立つ直前のままでいるわ。懐かしいでしょ? ルイル。
そうこの世界は、貴方が旅立つ直前で時間がとまっているのよ……。
だから……私はあなたとずっといられる……」
アイリスは完全に狂っていた。
もし俺がこの場で、そんなことする必要がないと彼女に訴えかけても、その言葉は彼女の耳に届くことはないだろう。
正直なところ、彼女の会話から、俺の気持ちなどどうでもいいとうことが、痛いほど感じられた。
今の彼女が望んでいるものは、俺の気持ちよりも、俺という存在だけなのだと。
こんなことを思っていたと同時、今まで淡々と話していた彼女の口調が急に変わる。
「……ずっとルイルと一緒ずっとルイルと一緒ずっとルイルと一緒……
ふふふふふふふふふふふふふふふ……
そう私が何をしようとルイルはずっと私と一緒。
……何があろうともルイルと一緒。
……私とルイルは永遠に一緒……」
俺はこの瞬間理解したくもないことを理解してしまった。
この世界は、あの日のまま時間がとまっている。
ということは、俺がここでまた彼女に殺されようとも、日付が変われば俺はまた生き返り、エルベに別れを告げ部屋を出、またアイリスに会いに行くだろう。そしてまた殺され、またアイリスに……。
「あぁああぁあぁあぁあぁああぁああああ!!!!!!」
俺はただその場で悲鳴を上げ倒れこむしかなかった。
目を開けると俺は、エルベと暮らしていたあの部屋の一室で寝ていた。
周りは、当時俺とエルベが暮らしていたままの部屋だった。
……先ほどの出来事はすべて夢であったのだろうか?
今この状況ではわからない……。
でもなんなんだろうか。この妙な違和感は。
俺は、頭の中が混乱したまま、部屋のドアを開けると、そこには何食わぬ顔でエルベがいた。
あの俺が旅立った日のままの姿で。
彼は俺に向かって思わぬ一言を告げる。
「おまえ、こんなにのんびりしてていいのか? 今日は旅立つ日だろ」
彼のセリフに驚いた。どうやら時間的には、俺が旅立つちょうどその日のようなのだ。
彼に今日の日付を尋ねたところ、どうやら本当にその日らしい。
だが、次第に何でかわからないが違和感が次第に大きくなっていった。
俺はこの妙な違和感がなんなのかを解決すべく、町をまわることにした。
無論部屋にあるあの荷物を持ち。
……エルベと慣れ親しんだ部屋を出た瞬間、ベッドから起きてからの妙な違和感の正体に気づいた。
それは、家の配置や構成がすべて鏡で写したかのごとく反対なのだ。エルベの利き腕さえも。
なぜ俺は起きてからそのことに気づかなかったんだ!!!!
となれば、信じたくもないが、これは一種の幻覚の類なのかもしれない。
ならばとる行動は一つだった。そう、アイリスに直に会いに行く。
俺は、アイリスの家に急いで向かった。
……。
アイリスの家を見た瞬間改めてこの世界が幻覚でできていることを実感せざるを得なかった。
アイリスの家だけは、周りの家と比べて相当な年月がたっていたのだ。
きっとこの家の中に、ここから抜け出すヒントがあると直感した俺は、アイリスの家の扉を強引に開けた。
ギィィィィィィィ……。
ドアはまるで、何年も使われていない屋敷の扉のような不気味な音を立てた。
中は昼なのにとても暗く、お化けや魔物といった類のものが出てもおかしくないような雰囲気を放っていた。
アイリスの家の中はというと何とも言えない異臭が漂っており、数年は人が使っている形跡がないことがすぐ理解できた。
俺はボソっと呟く。
「あの時とまったく同じ状況だな」
苦笑いをし、アイリスの部屋へと向かう。
まるで”何か”に導かれるように。
アイリスの部屋の前に着くと、背中に強烈な寒気が走る。
間違いなく、この部屋の扉の先に得体の知れない何かがいると、俺の第六感がそういっていた。
勇気を決して扉を開けるとそこには――
――アイリスが立っていた。
「ふふふふ……やはり貴方はここに真っ先に来た。貴方なら着てくれると思っていたわ。ルイル……」
アイリスでは口ではそのようなことを言ってるものの、そのセリフからは俺のことなどどうでもいいような感じでしか聞こえなかった。
きっと俺がこのような状況に置かれてるせいであろうが……。
俺は返す言葉も何故か思いつかなく黙っていた。
「何故私に会えたのに黙っているの? 聞きたい事だっていくらでもあるはずよね? ねえ……なんで私の目を見てくれないの?」
俺は、アイリスの目をみることが出来なかった。
彼女の目を見ると、本当にどうにかなってしまいそうだったからだ。
それに聞きたい事だって、扉を開ける前まではいくらでもあった。そう扉を開ける前までは。
でも、アイリスを見た瞬間に聞きたいことも疑問もすべて頭から消えてしまった。
実際は、聞くべきことや疑問がすべてなくなったという表現のほうがある意味正しいのかもしれない。
状況的にアイリスに会い、この状況に置かれていること自体彼女に聞くべきなのだろうが……。
そんな俺の状況をわかっててなのか、アイリスは一人ひたすらと俺に向かって独り言のように話を続けた。
「ふふ……。ねえルイル。貴方は、街の人たちを見ながらここまで来たのよね。
貴方と仲が良かったエルベ……当時のままだったでしょう?
エルベだけではないわ。学園に通っていた学生……港にいる人……町で働く人……そう皆当時のまま。
あなたが旅立つ直前のままでいるわ。懐かしいでしょ? ルイル。
そうこの世界は、貴方が旅立つ直前で時間がとまっているのよ……。
だから……私はあなたとずっといられる……」
アイリスは完全に狂っていた。
もし俺がこの場で、そんなことする必要がないと彼女に訴えかけても、その言葉は彼女の耳に届くことはないだろう。
正直なところ、彼女の会話から、俺の気持ちなどどうでもいいとうことが、痛いほど感じられた。
今の彼女が望んでいるものは、俺の気持ちよりも、俺という存在だけなのだと。
こんなことを思っていたと同時、今まで淡々と話していた彼女の口調が急に変わる。
「……ずっとルイルと一緒ずっとルイルと一緒ずっとルイルと一緒……
ふふふふふふふふふふふふふふふ……
そう私が何をしようとルイルはずっと私と一緒。
……何があろうともルイルと一緒。
……私とルイルは永遠に一緒……」
俺はこの瞬間理解したくもないことを理解してしまった。
この世界は、あの日のまま時間がとまっている。
ということは、俺がここでまた彼女に殺されようとも、日付が変われば俺はまた生き返り、エルベに別れを告げ部屋を出、またアイリスに会いに行くだろう。そしてまた殺され、またアイリスに……。
「あぁああぁあぁあぁあぁああぁああああ!!!!!!」
俺はただその場で悲鳴を上げ倒れこむしかなかった。