港の上に立つアイリス4 -この世界のルール-
俺が悲鳴を上げたと同時、アイリスが俺のほうへ向かってきた。
アイリスが俺と接触しようとしたまさにその瞬間!
謎の光が俺を包み意識を失った。
……。
目を開けると、見たこともない部屋で俺は横たわっていた。
体には特に痛みはなく、どうやら無傷らしい。
「気がついた?」
聞き覚えのない少女の声。
俺は、声がしたほうに振り向くと、見た目が10 歳くらいの少女が椅子に腰掛けてこちらを見ていた。
「ふぅ……間一髪。貴方がこんなにも早くターゲットに接触するのは想定外だったわ……」
彼女が何を言ってるのか理解できずに、俺は首をかしげた。
「ふふ……その顔じゃ何を言ってるんだこの小娘は……! って感じかな?
いいわ。はじめから丁寧に説明してあげる。でも今回限りよ?」
彼女はそういうと丁寧に一から説明してくれた。
「まず、自己紹介がまだだったわね。私の名前は、エスティア=ミアスレーゼ。
とりあえず、この世に存在する世界を監視する者の一人とでも言っておきましょうか。
アイリスのことだけど、あなたの知ってのとおり、昔の面影は何一つ残ってないはずよ。
だからもう私たちの組織は、彼女を討伐することに決め――」
俺は、すさまじい勢いで彼女の話を折る。
「ちょっとまってくれ!! それは、どういうことだ」
俺がそういった瞬間、彼女は予想通りといったような顔をし、その部分について話し始めた。
「彼女は、もう人間ではない。いいえ……
はじめから人間ではなかったといったほうが正しいかもしれない。
でも当時の彼女は、人間として生きると誓っていたはずよ。
そう……あなたが旅立つその日まではね。
なぜあなたの旅立ちであんなことになってしまったのかは私にもわからない。
でもただ一つ言えることは、先ほど言ったこととは違うけれど、あなたが正常な意識を所持してるという事実上
ひょっとすると彼女を救うことができるかもしれない。
だから私に協力してほしい」
協力してほしいとは言っていたものの、もはや俺には協力するという選択肢しか残っておらず……。
「……わかった。協力する」
と返事するしかなかった。
エスティアが、”アイリスが人間ではない”だの”人間として生きると誓っていた”だのと言っていたがここで俺が質問をしても、納得できる回答など得ることが出来ないだろう。そう悟った俺は、これ以上質問をすることなく協力するという返事をしたのだった。
「さてと……アイリスをどうにかする手がかりでも探しに行きましょうか。
この世界は彼女の強いイメージの元で構成されている……。
とならば、彼女をどうにかする手がかりもこの世界のどこかにあるはずよ」
俺は頷くと、彼女とともに部屋を後にした。
この精神世界が、俺が住んでいたケルクルイズを元に形成されているという事実上、街案内をしながら回ることにした。
まず、俺が住んでいたアパートを案内することにした。
俺たちはアパートに入ろうとするがここで、何故かアパートに踏み入ることが出来ないという謎現象に遭遇した。
「あれ……? 一歩が踏み出せない……」
「どうやらこの精神世界には例外処理がちゃんと設定されているようね」
例外……処理……?
それはどういう意味なのだろうか? わけがわからない俺は彼女に質問をした。
「高度な精神世界にはね、精神世界を完全に安定化させるために、精神世界内にいるモノに条件を与えている場合があるの。
例えばね、貴方が旅立つ日に、重要な忘れ物をしたとする。そして貴方はその忘れ物を取りに戻る。
その間に諸事情により船が出発する。
このような条件の場合、貴方の未来は現在に至らないでしょう?
なんせ貴方は航海できなかったことになるんですから。
つまりそういうことよ」
正直どういうことだ。
俺は余計に悩んでしまった。
その表情を見てか、彼女は補足しだした。
「うーん。つまりはね……この精神世界内においては、完全にここにあるモノ達の行動にルールがあるのよ。」
「例えば、貴方はこの精神世界に着いた瞬間アイリスの部屋に向かったでしょう?
それは彼女が敷いたルールに乗っ取った行動だってこと……つまり貴方はアイリスに導かれたの。
ただあなたの場合、ちょっとルールが特殊のようね……うまく説明することができないけど」
つまり俺のここに来てからの行動はすべてアイリスが仕組んだもの。
彼女は俺が精神世界に入ったと同時に、俺にルールを敷き、その通りに行動させた。
これにより俺は、彼女に何をされようが、一定の行動のみで動く、いわば作業をひたすらにこなす機械のような動きをしていたことになる。
ただひとつ、彼女にミスがあるとすれば、エスティアのような存在が俺の前に現れたこと。
恐らくアイリスは、彼女を発見次第消しにかかるだろう。
俺はそう思い彼女の顔を見ると、俺が今何を思っていたのかわかったように彼女は言った。
「大丈夫よ。私はアイリスなんかに殺されないから」
そんな根拠はどこにもない。
と思ったが、彼女の顔を見た瞬間何故か大丈夫と思ってしまった。
「さてと、貴方に強いたルールを解除しましょうか。
もしルール変更されて私に攻撃でもしてきたら溜まったものじゃないし」
彼女が怪しい呪文を唱えると同時に、肩から何かは抜けたように、急に体が軽くなった。
「ふぅ……これでアパートの中に入れるハズよ……」
彼女が呪文を唱えた後から急に疲れたような感じになったが、ここで気遣っても何故か怒られそうな気がしたので、そっとしておくことにした。
俺たちはゆっくりとアパートの中に入った。
アパートに入ると彼女は、部屋中のドアを片っ端から開けようとしだした。
「そこ知らないやつの部屋なんだが……」
「人の部屋なんか関係ない!
ここは精神世界なんだから、人の部屋だろうがなんだろうがアイリスの意識が作り出した空間なのよ!」
「いやわかってるけど……でもさ」
「もう黙ってて!」
「はい」
黙ることにした。
結局部屋のドアが”まともに”開くのは、俺が住んでた部屋のみのようだ。
部屋に入るとエルベが、俺の部屋の中で静止していた。
「本当によく出来てるわね……この世界。もちろん悪い意味で。
ここまで完全にすべての人をオモチャのように扱えるとは大したものだわ……。
こりゃーリアルネトゲに近いものがあるわね」
ネトゲー? ってなんなのだろうか。
彼女は唐突によくわからないことを言い出すな……。
ここでいちいち質問しても、彼女を不機嫌にさせるような気がしたので、余計な詮索は一切しないことにした。
「さてっと……エルベ君のルールもついでに解きましょうか。
うふふ。アイリス……あなたは最大なミスを犯したわね。
ルイルを完全に操ろうとしたためだとはいえ、人の感情を消さなかったのはまずくてよ?
それが貴方の誤算よアイリス!!!!」
彼女は、俺に先ほどかけたような呪文をダラダラと詠唱しだした。
その途端、突っ立ってたエルベが急にガタッとベッドに倒れた。
「ベッドに倒れこむのは少々出来すぎね」
…………。
「……ふぁ〜。良く寝た。およ。ルイルじゃねえか久しぶりだなおい」
エルベが目を覚ますと俺に向かってそういってきた。
いきなりの高テンションだ。
だが彼の高テンションとは裏腹に、俺は大泣きをしていた。
俺が大泣きしている間に、エスティアはエルベに現状況について説明していた。
恐らくこの光景を絵や何かであらわされるとしたならば相当な光景であろう。
俺が泣き止むと同時にアパートを後にした。
アイリスが俺と接触しようとしたまさにその瞬間!
謎の光が俺を包み意識を失った。
……。
目を開けると、見たこともない部屋で俺は横たわっていた。
体には特に痛みはなく、どうやら無傷らしい。
「気がついた?」
聞き覚えのない少女の声。
俺は、声がしたほうに振り向くと、見た目が10 歳くらいの少女が椅子に腰掛けてこちらを見ていた。
「ふぅ……間一髪。貴方がこんなにも早くターゲットに接触するのは想定外だったわ……」
彼女が何を言ってるのか理解できずに、俺は首をかしげた。
「ふふ……その顔じゃ何を言ってるんだこの小娘は……! って感じかな?
いいわ。はじめから丁寧に説明してあげる。でも今回限りよ?」
彼女はそういうと丁寧に一から説明してくれた。
「まず、自己紹介がまだだったわね。私の名前は、エスティア=ミアスレーゼ。
とりあえず、この世に存在する世界を監視する者の一人とでも言っておきましょうか。
アイリスのことだけど、あなたの知ってのとおり、昔の面影は何一つ残ってないはずよ。
だからもう私たちの組織は、彼女を討伐することに決め――」
俺は、すさまじい勢いで彼女の話を折る。
「ちょっとまってくれ!! それは、どういうことだ」
俺がそういった瞬間、彼女は予想通りといったような顔をし、その部分について話し始めた。
「彼女は、もう人間ではない。いいえ……
はじめから人間ではなかったといったほうが正しいかもしれない。
でも当時の彼女は、人間として生きると誓っていたはずよ。
そう……あなたが旅立つその日まではね。
なぜあなたの旅立ちであんなことになってしまったのかは私にもわからない。
でもただ一つ言えることは、先ほど言ったこととは違うけれど、あなたが正常な意識を所持してるという事実上
ひょっとすると彼女を救うことができるかもしれない。
だから私に協力してほしい」
協力してほしいとは言っていたものの、もはや俺には協力するという選択肢しか残っておらず……。
「……わかった。協力する」
と返事するしかなかった。
エスティアが、”アイリスが人間ではない”だの”人間として生きると誓っていた”だのと言っていたがここで俺が質問をしても、納得できる回答など得ることが出来ないだろう。そう悟った俺は、これ以上質問をすることなく協力するという返事をしたのだった。
「さてと……アイリスをどうにかする手がかりでも探しに行きましょうか。
この世界は彼女の強いイメージの元で構成されている……。
とならば、彼女をどうにかする手がかりもこの世界のどこかにあるはずよ」
俺は頷くと、彼女とともに部屋を後にした。
この精神世界が、俺が住んでいたケルクルイズを元に形成されているという事実上、街案内をしながら回ることにした。
まず、俺が住んでいたアパートを案内することにした。
俺たちはアパートに入ろうとするがここで、何故かアパートに踏み入ることが出来ないという謎現象に遭遇した。
「あれ……? 一歩が踏み出せない……」
「どうやらこの精神世界には例外処理がちゃんと設定されているようね」
例外……処理……?
それはどういう意味なのだろうか? わけがわからない俺は彼女に質問をした。
「高度な精神世界にはね、精神世界を完全に安定化させるために、精神世界内にいるモノに条件を与えている場合があるの。
例えばね、貴方が旅立つ日に、重要な忘れ物をしたとする。そして貴方はその忘れ物を取りに戻る。
その間に諸事情により船が出発する。
このような条件の場合、貴方の未来は現在に至らないでしょう?
なんせ貴方は航海できなかったことになるんですから。
つまりそういうことよ」
正直どういうことだ。
俺は余計に悩んでしまった。
その表情を見てか、彼女は補足しだした。
「うーん。つまりはね……この精神世界内においては、完全にここにあるモノ達の行動にルールがあるのよ。」
「例えば、貴方はこの精神世界に着いた瞬間アイリスの部屋に向かったでしょう?
それは彼女が敷いたルールに乗っ取った行動だってこと……つまり貴方はアイリスに導かれたの。
ただあなたの場合、ちょっとルールが特殊のようね……うまく説明することができないけど」
つまり俺のここに来てからの行動はすべてアイリスが仕組んだもの。
彼女は俺が精神世界に入ったと同時に、俺にルールを敷き、その通りに行動させた。
これにより俺は、彼女に何をされようが、一定の行動のみで動く、いわば作業をひたすらにこなす機械のような動きをしていたことになる。
ただひとつ、彼女にミスがあるとすれば、エスティアのような存在が俺の前に現れたこと。
恐らくアイリスは、彼女を発見次第消しにかかるだろう。
俺はそう思い彼女の顔を見ると、俺が今何を思っていたのかわかったように彼女は言った。
「大丈夫よ。私はアイリスなんかに殺されないから」
そんな根拠はどこにもない。
と思ったが、彼女の顔を見た瞬間何故か大丈夫と思ってしまった。
「さてと、貴方に強いたルールを解除しましょうか。
もしルール変更されて私に攻撃でもしてきたら溜まったものじゃないし」
彼女が怪しい呪文を唱えると同時に、肩から何かは抜けたように、急に体が軽くなった。
「ふぅ……これでアパートの中に入れるハズよ……」
彼女が呪文を唱えた後から急に疲れたような感じになったが、ここで気遣っても何故か怒られそうな気がしたので、そっとしておくことにした。
俺たちはゆっくりとアパートの中に入った。
アパートに入ると彼女は、部屋中のドアを片っ端から開けようとしだした。
「そこ知らないやつの部屋なんだが……」
「人の部屋なんか関係ない!
ここは精神世界なんだから、人の部屋だろうがなんだろうがアイリスの意識が作り出した空間なのよ!」
「いやわかってるけど……でもさ」
「もう黙ってて!」
「はい」
黙ることにした。
結局部屋のドアが”まともに”開くのは、俺が住んでた部屋のみのようだ。
部屋に入るとエルベが、俺の部屋の中で静止していた。
「本当によく出来てるわね……この世界。もちろん悪い意味で。
ここまで完全にすべての人をオモチャのように扱えるとは大したものだわ……。
こりゃーリアルネトゲに近いものがあるわね」
ネトゲー? ってなんなのだろうか。
彼女は唐突によくわからないことを言い出すな……。
ここでいちいち質問しても、彼女を不機嫌にさせるような気がしたので、余計な詮索は一切しないことにした。
「さてっと……エルベ君のルールもついでに解きましょうか。
うふふ。アイリス……あなたは最大なミスを犯したわね。
ルイルを完全に操ろうとしたためだとはいえ、人の感情を消さなかったのはまずくてよ?
それが貴方の誤算よアイリス!!!!」
彼女は、俺に先ほどかけたような呪文をダラダラと詠唱しだした。
その途端、突っ立ってたエルベが急にガタッとベッドに倒れた。
「ベッドに倒れこむのは少々出来すぎね」
…………。
「……ふぁ〜。良く寝た。およ。ルイルじゃねえか久しぶりだなおい」
エルベが目を覚ますと俺に向かってそういってきた。
いきなりの高テンションだ。
だが彼の高テンションとは裏腹に、俺は大泣きをしていた。
俺が大泣きしている間に、エスティアはエルベに現状況について説明していた。
恐らくこの光景を絵や何かであらわされるとしたならば相当な光景であろう。
俺が泣き止むと同時にアパートを後にした。