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パンをくわえた少女
はじめに
お題を頂戴いたしました→ぱんをくわえた女の子
ベタなのは面白くないので、
ひねろうとしたらこんなことになった。


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澄み渡った空の下、俺は今日も元気に学校に向かう。
だが実際はそんな綺麗な状況ではなかった。
なぜなら後10分以内に校舎に入らないと俺は遅刻!!
いつものように夜遅くまで起きてたせいでこの有様だよ!!

「くっそぉ……なんで深夜アニメあんなにおもしれーんだよ……」

愚痴でもいわないとやりきれないこの想い!

「らんららんららーん」

突然角からパンを加えた女の子がひょこっとでてきた。

「おま……あぶ……」

次の瞬間、俺は思いっきり彼女に体当たりしてしまった。
彼女は、ぶつかった衝撃で数十メートルとばされていた。

「ふえええええん。いたいよぅ……パンを落としちゃった……うええええええん」

ものすごい勢いで泣いている彼女を見て、俺は、どうすることもできなく、ただその場に立ち尽くしていた。
っていうか、普通はパン加えてる女の子がダッシュで”そこの人どいてー”とかいって突っ込んでくるものなのに、鼻歌歌いながらパンくわえてるってなんなの。

「あー。いっぱいないたらすっきりしちゃった」

ろくでもないことを俺が考えているうちに、彼女は泣き止み俺のことを睨んでいた。

「あ……え……その……ごめん」

彼女は俺が謝る姿をみると、さっきまで睨んでいたのをやめて、笑顔で俺を見つめてきた。

「あ、いいの……私もパンくわえながら鼻歌うたってて左右確認しなかったのが悪いんだし……」
「……本当にごめん! 怪我とかない?」
「だいじょうぶ。こうみえても私頑丈だから。それよりお兄さん学生でしょ? だいじょうぶなの? その……」
「え?」

キンコンカンコーン

……。
どうしよう。完全にアウトだ。
女の子にぶつかって遅れました。なんて昔のドラマの中でも通用しねーよ……。
どうしよう……。
こういうときは……。

「今日は休みなんだ」
「え? そうなの? ここに来る途中にお兄さんと同じ制服をきた学生をいっぱいみたけど……」
「目の錯覚だよ」
「なんだ。そっか」

なんかあっさり騙されてくれたようで。
これで、私のせいで……(以下省略)とかなったらまたややこしいしな!
おそらく俺の判断は間違ってない。
しっかしだ。女の子がくわえていたパンはなんなんだろうか。
すると彼女が、くわえていたパンを指差し、これ気になるの? ときいてきた。

「ああ。気になる。普通のパンなのかそれ」

自分で何を聞いてるんだろうか。
そりゃあ口にくわえてるんだから普通のパンだろうに。

「これね。普通のパンじゃないよ。なんかねなんとかかんとかっていう……なんだっけ……」

なんだっけじゃねーよ! と心の中で突っ込みを入れた。
っていうか普通のパンじゃねーのかよ! じゃあなんなんだそのパン。
くっそー。余計に気になるじゃねーか!
まあいいとりあえず……。

「じゃあ俺は、急いでたんで。じゃあな! さっきは本当にごめんな」
「えっと……」

彼女はなにか言いたげだったが、さすがにそろそろ学校にいかないとやばい!
俺は、彼女をほっといて全力疾走で学校に向かった。
学校に着くと、1時間目の数学が既に始まっていた。

ガラガラガラガラ

空気を読まないで颯爽と教室に入る。
先生の視線がハンパなく怖い。やばいこれ……。どうしよう……。
でも正直にいうしかないよな!

「すいません……朝パンをくわえた女の子にぶつかってしまい、遅れてしまいました……」
「なぁぁぁにぃぃぃぃ!? それならしょうがないな!」

は? さっきまで怖かった先生の笑顔が急に緩んだ。
――が、バシーンと教科書で思いっきり頭をたたかれてしまった。

「嘘をつくんならもっとマシな嘘をつきなさい。でもなんか先生懐かしくなっちゃったよ。はっはっは」

どうやら先ほどの一発で許してくれるらしい。
先生最高! 物理の先生だったら俺この場にいなかったかもしれん。
と感謝し、俺は席に着いた。

「おまえ。さすがにそれはねーわ」

話しかけてきたのは俺の仲良し空田だ。
どうせここで、説明しても信じてもらえないだろうし、無視することにする。

「チッ。なんだよ……無視かよ」
「空田うるさい。廊下に立ってろ。だが微分積分100問は全問廊下で解くように」
「は!? ふざけ……」

次の瞬間、空田は華麗に宙を舞った。

――あっという間に授業も終わり、用事がないのでさっさとかえることにした。
すると、帰り道の途中に朝ぶつかった少女に出くわした。

「あ……」
「あ……」

互いに気づき目を合わせるも言葉に詰まる。
ああなんと気まずいことか。きっかけがあればすぐに話が進む(はず)のに……。
ああなんかないか……。
と迷った挙句に出た一言が。

「本日はいい天気ですね」

うわあああ……なんだこのお見合いで、会話に困ったときに飛び出るような一言は……。
ほら彼女もポカーンとしてるじゃん……。反応に困ってるじゃん……。なんか距離とってんじゃん……。

「え……そうですね」

そりゃ”そーですね”としかかえせねーよ! どうすんだよこの空気!
どうするよ俺!? ラ○○カー○ほしいよ! おい!

「…………」
「…………」

気まずい。すんごく気まずい。打開策は……打開策は!?

「どこに住んでるの?」

そんなこときいてどうすんだよ俺! 彼女困ってるじゃん!

「えっと。そこをまがって五軒目のハウスです」
「そうですか。って……え?」

いやまて。そこは俺んちの隣のハウ……家だ。

「奇遇ですね。その隣俺んちです」
「そうなんですか」

奇遇ですね。って自分で何言ってんだよ……。
しかも彼女もそうなんですかって……。
余計に変な空気になったじゃないか!

こんな気まずい空気の中、打開策を見出したのは彼女が先だった。

「ああ。そうそうお兄さん! このパンのこと思い出したんですよ! 」
「ほへ? あ、ああそうなのか! 教えてくれ」
「このパンはですね! なんとですね! 自分が頭に思い浮かべた味がするという特殊なパンなんです」
「それはすごいですね。それだけですか」

なんか俺の口調がおかしくなってるのは、まあいい。
すごいですねとか言ってるのもまあいい。
それだけですかって言うのは……まずいな。彼女泣きそうじゃん。

「そ……それだけですよ? でも、すごいですよね? ね?」
「あ、ああすごいよ! そりゃあ夢がひろがるパンだな! うん」
「で、です……よね! おじいちゃんの発明は、すごいんだから……」

ああなんで、こうも彼女をキズつけることをさりげなく言ってしまうんだろうか。
ダメ男A並にダメだな……。

これが、彼女との出会いの最初の一日である。
これから、彼女とはいろいろな事件に遭遇したり、一夜を友にしたり、それこそ未知との遭遇までしちゃうわけだが、それはまた別のお話。
俺たちの物語は始まったばかりだ!